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『ゾワワの神様』(うえはらけいた)を読んだ

じつは子供の頃から、漫画を買った記憶がほとんどない。

それが今回「ゾワワの神様」を買おうと思った理由はただひとつ「クリエイターの雰囲気を垣間見たかったから」。

僕は、世の中にクリエイトじゃない仕事なんてない、と思っている。どんな事務職だってどんな肉体労働だって、なにもない状態からなにかを作っていれば、それはクリエイター。仕事によってクリエイトできる幅が異なるだけ。その中で「クリエイターです」と名乗るのは、そのクリエイト幅がむちゃくちゃ大きい人たちという解釈だ。

この本の舞台はコピーライター。文字で本質を感じさせる仕事。漫画だからサクサク読めちゃうんだけど、なんだかもう一度読みたいと思って、お風呂に入りながら読むこと5回。なんだかずっと読んでいたくなる不思議な漫画でした。

まず、第1話に出てくる「本業でコピーを生業にするなら『言葉は万能ではない』それを肝に銘じること」には、深くうなずいてしまった。言葉は多くのことを正確に伝えることができる。論理的な文章としっかりした構成があれば、かなりのことが伝えられる。しかしその「かなりのこと」は、じつは伝えたいことのほんの少しだけだったりもする。だから歌詞には曲が付くし、本には挿絵や表紙デザインがあり、WEBにはWEBデザインがある。ライターとしてはそう思ってきた。

また第17話には、コピーライターの仕事の9割がリサーチだとある。ライティングも同じ。しっかりしたリサーチなく、説得力のある文章は出来上がらない。デザインも同じはず。デザイン対象の会社や商品についてとことん知らなければ、きちんとしたデザインはできないはず。自分の気持の良いデザインや、ピンタレストなどから見つけてきたデザインを参考にするのは、リサーチではない。

もっとも共感できたのは、第12話に出てくる「良いコピーライターの条件は、自分をコピーライターと思っていないこと」というセリフだろう。僕は自分が書く文章を最大限伝えてくれるデザインを作りたいと思っている。周りの人は「デザイナーになりたい」というふうに今ある仕事名で呼ばれたいと思っている人が多いような気がする。デザイナーになりたい、ではデザイナーに慣れないのでないか?とつねづね思っているので、この第12話はとってもよい話だった。

この本の印象深いところを挙げていくとキリがなくて、「結局全部じゃん」と言われてしまいそうだ。だから繰り返し読んでしまうのかもしれない。